数年ぶりにコミケで東方の同人誌を買ってきた話

年が明けました。
私は大晦日も元旦も仕事です、お疲れ様です。

さて、この度は先日数年ぶりにコミケに訪れたことについて、少しばかり書き留めたいと思い更新しました(数年ぶりかどうか定かではありませんが)。
タイトル通り、東方の同人誌を現地で数年ぶりに買いました。当日は何の準備もなくカタログさえ持ってない状態で、別によく知った知り合いが居る訳でもないけど、衝動的に出かけました。

きっかけはその東方の同人誌で、端的に言うと、
以前持ってた薄い本を読み返して
やっぱこの人天才かよ死んだな
って思って飛び出たということなんですが、結果的にそのサークルさんで買った後、その周囲をぐるぐるして帰りました。まさにそのサークルだけを目当てにやってきたのです。
今回はその東方を中心とした話です。

 

東方Project」については今更説明するやもありませんが、一応同人ゲームのことです。この同人ゲームの物語・人物等から二次創作が派生し、2000年代後半にはネット上で大きなブームを築き上げました。
東方Projectの作品は2018年初頭現在で16作品+αあります(厳密にいうともっと多いです)が、幻想郷という彼らの世界を共有しながらそれぞれで新たなストーリーや新規キャラクターが作られており、作品ごとに「東方紅魔郷」「東方風神録」等のタイトルが名付けられています。先のブームは丁度7、8作目辺りの作品、風神録地霊殿等が発売された時点で起こっていました。

私はこの頃中学生となり、オタク街道を突き進む中で当然のように東方に出会いました。
しかしながら当時の私はまだまだウブい時代で、二次元キャラに恋するとかよく分からないみたいな思想を持っており、同時期居た東方オタクの友人の影響からキャラを知り、結果的に東方風神録のキャラクターである「洩矢諏訪子が好き」ということにしました(無論、後々本当に好きになるのですが)。
彼女は簡単にいうと神様なのですが、色々あって蛙がモチーフになっていて、そしてロリです。こういうロリキャラを最初追い求めるのは、恐らく男性オタクの本能なんだと思います。
さておき、そのプロフィールはだいたい2010年くらいまで引きずっていたように思います。
途中で「東方地霊殿古明地さとりってキャラもかわいいんじゃね!?」と思い方向転換したこともありましたが、彼女もまたロリでした。小五ロリとか覚えてますか皆さん?

ところで「このキャラがすき」というのは、どうしても風化しがちです。
特に大人気の漫画やアニメなら兎も角、たかだか同人ゲーム一作品しか出てないキャラというのは「ビジュアル」以外に推し続けるための要素が見当たらず、私の東方ブームは去っていきました。

 

しかし、時は変わって2012年、再びブームはやってきます。
これは皆さんあるかどうかわからないんですが、
「『昔ハマってたアレ、今どうなってんだろう』
と思って一回ググってみたら知らん間に沼底に嵌ってましたw」
というヤツで再発した、私の中の第二次東方ブームです。
このときのきっかけとか云々は忘れましたが、私は当時最新作の「東方神霊廟」という作品にどっぷり嵌っていました。
前回のブームと違う点はキャラクターに嵌ったわけではなく、作品そのものに嵌ったということです。

 

東方神霊廟」は震災の年である2011年に発売された13作目の作品です。
ストーリーを簡単にご紹介しますと
幻想郷(東方の世界の舞台ですね)で大量の神霊(あの白い霊魂みたいなやつです)が湧き、不安に思った神社の巫女さん(霊夢さんですね)が原因を究明しにいったら、聖徳太子が復活していた(?)
という話です。さっぱり分かんないし、すっごいスピリチュアルやね。

誰もが知る厩戸皇子こと聖徳太子は、同時に10人から話されても全てを聞き分け忠言出来たとされ、その才能から豊聡耳(とよさとみみ)と呼ばれました。まあ実際は聴覚過敏だったんだと思います。
そんな聖徳太子をモチーフにした「豊聡耳神子」の現世への復活を描いた作品がこの東方神霊廟です。まあ女の子にされてますけど

豊聡耳神子はいわば別の世界線を歩んだ聖徳太子で、本家の聖徳太子が仏教を広めたのに対し、生前の彼女は仏教を広める傍ら、自らを不老不死として己を高め続け仙人となる道教を信仰しています。
その仙人になる術として、身代わりを持って一旦死体となり再び復活するという手法を用いて、彼女は復活したのです。
彼女の復活には、死への葛藤、部下同士の騙し討ちといった、重苦しいストーリーが暗示されていて、それらが帰結するのは「生きることへの欲望」です。

 

初めて東方神霊廟を知った人の中で、ここまで読んでみて、その意味を理解しそのストーリーの深さを味わえた人は早々居ないと思います。多分めんどくさくて流した人も居ると思います。
その通り、取っつきにくく、そしてダークな雰囲気です。

それは物語の難解な部分、「宗教」というテーマのニッチ性、作者ZUN氏の音楽性の転換など、幾多のものが重なった取っつきにくさでした。
実際のところ色んな所で「今までの東方とは毛色が違う」とか「音楽が受け付けない」とか、結構そういうコメントを見かけた覚えがあります。

私も当初はその一人でしたが、いつも通りキャラクターから好きになりました。
霍青娥」というキャラクターは中国人なのですが、清楚な感じで、優しそうな感じで、ちょっとお姉さんな感じで…。なお人妻です(二年くらいで趣味がごろっと変わりました)。
彼女はその優しそうな表面とは裏腹に、東方神霊廟におけるエピソードのすべての首謀者であり、赤ちゃんぶっ殺したりする残虐なヤツやぞ、と公式に紹介されています。
そんな不穏な紹介がされていたり、何故首謀者なのか?ということを漁っていくと、どんどん深い話が出てくるし、そもそも青娥は何者なのか?と考え出すと謎が深すぎました。
僕はとうとう原書に手を出しました。
東方Projectのキャラクターの大半はモチーフとなった人物とか妖怪がいます。彼女も例によって、中国が清の時代の小説「聊斎志異」7巻に収録されている「青娥」に登場する少女、青娥がモチーフとされています。
僕はクソ田舎に住んでいたので、市内の一番大きな図書館の図書カードを作って、せっせと向かっては読み込むというのを何回もしました。結構病的です。
ちなみに聊斎志異の「青娥」を分かりやすく解説したまとめがありました。

「霍青娥」の元ネタ「青娥」について - Togetter


結果分かったことはあんまりありませんでした。
むしろ日本語訳が難しくて後でネットで調べたりもしましたが、結果的にどんどん神霊廟が持つ世界観に染まっていきました。ちなみにどのくらい染まってたかというと、
〇大学の第二言語を選択する際、青娥が中国人だから中国語を取る
〇他の授業でも道教的な思想を求めて中国文学を選択する
神霊廟の同人アレンジを船上で聞きたいと思い、船で帰省することを選択する
など、大学生なのに小学生みたいな思考で行動していました。
そして気づいたころには東方神霊廟という作品が好きになっていたのです。

 

それからはコミケに行って熱心に薄い本を漁る機会もありました。
コミケにおいてジャンル「東方Project」は結構大きなウエイトを占めていて、カップリングによっては数百のサークルが出ていました。少なくとも2013年までは。
その中での神霊廟を用いた同人の数はというとまあまあ少なめで、2013年の頃は出たてであんまり知られてないからな、カップリングの幅も少ないからな、と勝手に思っていました。

2013年くらいから艦これが一世を風靡したのは皆さんも記憶に新しいと思います。あっちもこっちも艦これに鞍替えして、気づけばチェックしていたサークルの半数以上が艦これという事態。
勿論艦これにもハマってたのでちゃっかり行きました。というかやっぱり、もれなく私自身も東方から艦これに乗り換えていました。

その間の東方はというと、派生作品である書籍「東方求問求授(ぐもんくじゅ)」が発売され、作中では宗教にスポットが当てられます。道教家の豊聡耳神子が長々と喋るだけでなく、仏教をテーマにした前作東方星蓮船のラスボスだった聖白蓮と濃く絡み合い、ゲーム内では分からなかったキャラクターの素性が明らかになりました。
更に同時期、格ゲーの「東方心綺楼」が発売され、そこもやはり宗教がテーマとして神霊廟からは豊聡耳神子物部布都が参戦、そして星蓮船からも2組登場し、最終的に彼らに深く関わる新キャラ秦こころも登場します。ちなみにこの後の格ゲー2作「東方深秘録」「東方憑依伝」でもこれまた5人とも登場しています。
この他書籍の「東方茨歌仙」は主人公茨木華扇が仙人(?)として登場するほか、道中で冒頭の青娥も、もちろん神子も絡むことになります。

すなわち、人々が艦これに行き、そして今やFGOが風靡する最中、僕の元祖推し作品はあろうことか東方Projectの最前線を歩んでいました
発売から5年経った2016年にそれに気付き、こりゃやべえぞと思った矢先行われたのは東方人気投票。文字通りキャラ別、音楽別、作品別の人気投票が、東方Projectでは毎年のように行われています。勿論神霊廟にすべてをかけて投票です。

 

結果からお伝えすると、東方神霊廟は東方の中でもニッチでした。
各キャラも音楽も順位を後退し続けていて、ひたすら困惑です。
どの作品でも超えたことのある10位より上位のランクを、唯一神霊廟はどの部門でも越えたことがない
とか色々見ましたが、とにかくあまり表に出ていない作品ということが分かります。

キャラ部門を簡単に説明すると、上位の辺りはあなたも知ってる主人公とか初期作品の大御所が並らんでいて、第13回で初登場のキャラが上位に組み込まれ、神霊廟のキャラクターたちはなんていうか微妙な立ち位置に居ました。
あんなに二次創作のネタはあるのになぜ流行っていないのか?私は熱心に分析した動画を見たりして調べました。

独断と偏見から申しますと、ロリとエロが売れていました。

それは原作にある、とか、書籍で出た、とか、そういうのは関係なくて、
ただ「ロリ」なだけで潜在的ロリコンが自動的に順位を10押し上げてしまい、このロリ同士がくっつけば…とか考えた天才有名作者が書いてしまっては、たちまち順位は3光年先まで飛んでいきます。
この際に必然的にR18作品が増えていくのが二次創作なのですが、ロリはえっちでも人気だし、ここで巨乳も株を上げます。茨木華扇はいい例でした。
しかもここで「ロリ巨乳」とか考え出す悪~い作家さんが居ます。そんなもの作った暁には人気上昇しすぎでとうとう画面の中のキャラクターに嫌われる勢いです。

あとこれはたぶん他のジャンルでもよくあると思うんですけど、一切絡んだことないのに何故か物凄い売れてるカップリングとかあると思います。
東方の初期作品はキャラ同士が何の話をしているのか分からないし、挙句喋ったことない子とか名前があやふやな子まで沢山いるんですが、彼らは上位にランクしています。ロリか、エロか、モナーにウケた子です。

それに比べて神霊廟の主要なキャラクターはどうでしょうか。
ゾンビ人妻ヤン姉天然聖徳太子

胸は…あるヤツはある。ないヤツはない。
相性がたぶん、悪いんだと思います。

これが分かったとき、当時は悔しい思いもしました。
しかしながら順位は当然つくものだし、もっとマイナーなカップリングを推している人だって沢山いるわけで、贅沢な悩みだと思いました。
そして何よりこの人気投票がすべてを司っている訳ではない。

 

冒頭のコミケに行った話に戻りまして、
ここで改めて、東方神霊廟の薄い本を買おう」と先のC93に向かったのです。

ところがどんなに歩いても、彼女たちの顔や姿の見当たる同人誌は殆ど見かけません。
なんてことだ…世間はそんなにも冷たいのか…と再びショックを受けました。
というのも以前訪れた2013年頃のコミケでは、神霊廟を主体とした島があったのです。
C93では島のかけらもなく、まるでコンビニ弁当の漬物のような存在でした。

人は大人になると、漬物の美味しさに気づきます。
見てくれは微妙だが、ご飯に合うし、栄養もあるし、酒にも合う。しかしながら子供や外人にとって、その美味しさを理解してもらうにはなかなかの苦労が必要です。

よく思い出してみるとこれまでの私の東方オタク歴は、そんな漬物の美味しさに気付くまでの過程を辿ったように思えます。
当初はお菓子が大好きで、一時渋いものを食べたかと思えば、やっぱり肉を食らう。
今の私は老人か或いは貧乏学生で、ご飯に添える美味しい漬物をひたすらに求めている…
(あっ言うまでもないですがここに登場する「漬物」は当然「東方神霊廟」の比喩ですよ。決して屠自古さんではないですよ)

私はそんなわけでもっと神霊廟の”美味さ”について知ってもらうべきじゃないか、そう思いました。
個人的な考えですが、闇雲に大きなジャンルになるより、もっと深みのある熟成されたジャンルとして一定評価を得てほしいと思っていて、そのためここまで内輪的な内容ではなく、出来るだけ概論的に述べて参りました。
すなわち「お前ら、東方神霊廟って面白いからちょっと見てみろ!

 

つづく?